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1.疑わしきは罰せず
2.思わぬうつ病
3.生検にだすためにブツをとる
4.イレギュラー発覚
5.全摘宣言の日
6.封じ手をあける
7.覚悟を決めるまで その1
8.覚悟を決めるまで その2
9.手術予定日を決める
10.手術でおこりうる問題
11.内科医は話し方がうまい
12.外来終了
13.入院の日
14.永久気管孔という穴
15.手術
16.あちらの世界にいったT その1
17.あちらの世界にいったT その2
18.下痢と微熱と貧血と
19.とつぜんの狭心症発作
20.失神発作
21.手ごわい嚥下の練習
…この項終わり…
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21.一筋縄ではいかない嚥下の練習
手術から1週間たった日に、いままで鼻から胃に入れていた管の先から白湯を入れた。うまく通ったので、中心静脈栄養に代わって「鼻から重湯」となった。
さらに1週間たった術後14日め。この日は移植した腸の通過検査が行われた。バリウムを飲んで、それをX線で見ながら腸にもれがないかを調べる。
この検査にD医師が立ち会った。
見事に合格!
腸はちゃんとついているらしい。漏れはなかった。バリウムも上手に飲み込んでいましたということで、この日の昼食から「口から重湯」になった。鼻の管とは今日でおさらば。顔がすっきりする。
久しぶりの経口食メニューは、手術前と似たようなものだった。重湯に具のないみそ汁、ジュースにゼリーのようなもの。
Tはたべものを口に含むと、くちびるを、とくに上くちびるをつきだして上を向いて飲み込んだ。そのようすは、まるで小鳥のようだった。口に含んだ物を胃にいれるために飲み込むと、くぷっと音がして、すこしだけ口に戻ってくる感じだった。あかちゃんがミルクを飲んでいるときのような感じ。
嚥下の練習は苦労の連続だった。口に入れたものが、すんなりと胃に落ちない。なにかの加減で鼻に回ってしまうと、とりだすのに苦労する。息が通っていないので、「ふんっ」と鼻息で異物を外に吹き出すことができないのだ。
そんなこんなで、一回の食事は半分しか食べられない。
「食事を味わったり、楽しんだりすることができない。のどごしを楽しむなんて論外」
「(流動食は)なまじ味がついているから、よけい腹が立つ」
と、Tは栄養士が聞いたら気を悪くしそうなことをいいながら、食事にたちむかっていた。ときどきたちあがっては首をのばして飲み込もうとする。まるでノドを一直線にして重力によって胃に落とそうとしているかのようだ。
子どもの頃から、意識することさえなかった「飲み込む」という行為。生きていく上でも「食べる」というのは基本行動の一つだと考えたTは、それがうまくできないことで落ち込んだ。
「一生、だれかの世話にならないと生きていけないのだろうか。もう自立した生活は送れないんじゃないだろうか」
気持ちが暗くなると、食事を前にしても、そういう不安な気持ちが先行してしまって手がでない。なんとか食べはじめても完食できず、ますます不安にかられていった。
なかなか思いどおりに飲み込むことができず、食事の時間になるとぶうぶういっていたTだったが、練習開始後5日めにはなんとか三分粥を食べられるようになった。三分粥は調子よく食べることができたので、翌日は果敢にも五分粥に挑戦。しかし、五分粥はおかずが普通食のおかずのようにごろんとした塊のものが多く、魚の日は食べられたけれど肉の日は食べられなかった。T、一気に自信喪失。夜の検温のとき、看護婦さんに「食事を三分粥に戻して欲しい」という。
すると看護婦さんは、
「お粥は食べられたの?」
「うん。でもおかずが食べられない」
「それならご飯は五分粥で、おかずを刻み食にしてもらう? 調理師さんがおかずを細かく刻んでくれるので、食べやすくなると思うけど」
と、提案してくれる。Tが躊躇していると看護婦さんは、
「せっかく五分粥が食べられるようになったんだし、もうちょっとがんばってみようよ」
と、励ましてくれる。
この励まし上手な看護婦さんのおかげで、Tは気を取り直し、明日から再び「五分粥に刻み食」にチャレンジしていくことになったのだった。
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