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1.手術の日
2.T、わめきちらす
3.眠れない夜
4.翌日から体を動かす
5.美しい手術の跡
6.抜糸見学ミッション
…この項終わり…
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6.抜糸見学ミッション
ドレーンが抜かれたのは、手術から3日後。面会に行ったらTは虚無僧スタイルではなかった。順調な回復を喜ぶ。しかし……。
うかつであった。こんなに早く抜かれるものだとは思わなかった。抜くところをみたかったし、抜いたものも見たかったのに。いい機会だから、あれもこれも見てやろうと思っていたのに、だいぶ見逃している。
せめて抜糸くらいは見学しなきゃ。
抜糸見学ミッション始動。
まず、なかなかお会いできないD医師に手紙を書く。「抜糸を見学させてください」
つぎに、Tに情報収集を頼む。
「抜糸しそうになったら、すぐに連絡して。仕事中でもなんでもとんでいくから。これから抜糸を、といわれたら私が到着するまで時間稼ぎをしてね」
24日にTから電話があった。
「明日、抜糸をするらしいよ。今日は別の医師が見てくれたんだけれど、これならいつ抜糸してもいいって。今、やっちゃおっか、となったんだけど」
ええっ?
「抜糸は主治医の楽しみらしくて、それを奪っちゃかわいそうだとかなんとかで、明日になった」
よかった。
「また、なにか情報があったら連絡してね」
「おお、まかしとき」
Tもミッションを楽しんでいるようだ。明日、D医師は外来診察日。外来が終わったあとに抜糸だろう。とりあえず夕方に病院にいくつもりにしていた。
翌日、昼過ぎにTから仕事場に電話。
「I医師と廊下でばったり会ったのでさぐりを入れてみたら、D医師は今日の外来予約は16人入っているんだって」
「ほう。1時間に3、4人に昼食タイムで午後3時半くらいですか」
「ま、そんなとこでしょう」
「了解、3時にはそっちに行く」
ミッションは成功した。午後4時すぎ、D医師がやってきて「じゃ、これから抜糸しましょう」ということになったのだ。Tと二人でいそいそと処置室へ。
Tは悪魔の椅子にすわる。D医師が抜糸の準備をする。D医師はガラス戸の棚からハサミとピンセットをとりだして、近くにあったトレイの上に放りなげた。激しい金属音がして器具はトレイに入る。ちょっと乱暴。
つぎにD医師は隣の部屋から、茶色の消毒液をたっぷり含ませた、ピンポン玉ほどの脱脂綿の玉をガーゼの上に2つのせてもってきた。
準備完了。椅子の背を倒して抜糸開始。
まずはTの鎖骨の上あたりを指でぎゅっぎゅっと押さえて、出血しないかを確認。茶色の消毒玉で傷口をまんべんなく塗る。右手にはさみ、左手にピンセットを持ち、ピンセットで糸玉をもちあげて根元にはさみを入れていく。五、六個の糸玉を切ったら、つぎは、傷口に3pくらいの長さに切ったサージカルテープを傷口に垂直に貼っていく。
「抜糸、全部終わりました」
えっ、もう終わり?
これでは、小さな傷を縫合したときの抜糸とかわらないじゃないか。がっくり。傷が大きかっただけに、もうちょっと違うパフォーマンスがあるかと期待していたのだが。縫合や抜糸のやり方は傷の大きさに関係がないのか。なんだあ。
ものたりなさを感じながら、私は仕事にもどった。
抜糸をしても、Tの痛みはいっこうにおさまらない。首の後ろ、後頭部にかけて「ゾワーッ」、「わんわん」鳴る頭、頭のてっぺんを触ると「ドーン」、ひげを剃っても「いったーい」、耳なんかもむくんでいるのかはれているのか、「ぼよよーん」。
なかなか調子がでなかった。しかし、抜糸後、肩の筋肉が固まらない運動法をまとめたプリントが看護婦さんから手渡されると、Tに、がんばらなきゃ、という気持ちがでてきた。
手術後だから、病人なんだからとそっとしていた体だったのに、動かしたほうが体のためだというのは、痛みにめげそうになっていたTを奮いたたせた。抜糸が終わって「いつ退院してもいいですよ」といわれたものの、こんなに痛みがあるのに退院しても……とTには不安もあったのだ。けれども、運動法をまとめたプリントを渡されたとたん、不安が消えた。
「そうか。抜糸したらもう病人じゃないんだ」
こうして、27日に退院。3回めの入院は19日間だった。
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